カトリック新聞に掲載されました

迫害逃れてきた人の受け皿に

アルペなんみんセンター開所

難民支援団体関係者らが立ち上げたNPO(特定非営利活動)法人アルペなんみんセンター(榎川勝也理事長)は、母国での迫害から日本に逃れてきた難民への総合的な支援を行うセンターを4月1日、神奈川県鎌倉市のイエズス会・日本殉教者修道院内で開所した。

イエズス会が建物や敷地を無償貸与したことで実現したこのセンターは、カトリック東京国際センターで長年、難民支援を行ってきた有川憲治さん(東京教区職員)を事務局長に、以下の3つの活動に取り組んでいく。

1つ目は、難民が日本社会に定住するためのサポート。具体的には ①シェルター(一時保護施設)の無償提供、②日本語や日本文化等を学ぶ場の提供、③ 難民認定申請手続きの支援、④ 通訳・翻訳支援 ⑤就労支援などを行う。

2つ目は、難民と日本社会をつなぐ橋渡しとしての役割で、日本の人々が難民への理解を深めることができるようにセミナー等を開催すること。

そして3つ目は、世界56カ国で活動する「イエズス会難民サービス」(JRS)と協働しつつ、難民が第三国に定住できるシステムを国内外でつくることなどである。

アルペなんみんセンターの特徴であるシェルターは、敷地内の「黙想の家」の一部を活用しているが、シェルターを設置した理由について、事務局長の有川さんはこう説明する。

「母国での迫害から逃れてきた人たちが、日本の空港(入国審査)で難民申請を希望した場合、そのまま母国に帰されるケースや、入管(法務省・出入国在留管理庁)の施設に送られ、何年も収容されるケースが現実に少なくありません。そうした人たちを入管施設に収容する代わりに、地域に住めるように許可する官民連携の制度『収容代替措置』(ATD)があります。本センターのシェルターが、その受け皿になれたらと思ったのです」

一方、入管施設に収容されている難民認定申請者は、収容施設外での生活が許される「仮放免」を申請したくても、日本に住所地がない場合は申請することができない。そうしたケースについても、同センターは、対応していく方針だ。

教会と社会の協働

日本は難民条約の締約国でありながら、難民認定率は0.3%(2018年度)と極端に低い。さらに、難民認定の可否についての結果が出るまでに何年もかかる。その間、難民認定申請者は精神的、経済的、法的にも不安定な状況に置かれ、民間の支援とつながるまでに、路上生活を余儀なくされる者が多く出ているのが現状だ。

アルペなんみんセンターは、そうした状況を改善していく第一歩を踏み出した。センターの名称に使用している「アルペ」は、イエズス会の元総長で、インドシナ難民の惨状に対応するためJRSを設立したペドロ・アルペ神父に由来する。

シェルターでは、既に難民認定申請者が生活を始めている。共同生活の中で心の傷を癒やしながら、日本文化や日本語を学ぶなど、自立に向けた準備を行っている。またシェルターはイエズス会の「黙想の家」としての機能も残し、さまざまな文化を持つ信者たちが自由に祈ることができる場としても活用していくという。

同センターは寄付で運営されるため、支援や詳細については、電話0467-55-5422、ホームページhttps://arrupe-refugee.jpまで。

カトリック新聞2020/4/26

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