鎌倉市議会・難民政策の見直しを国に要請

 2021年7月2日鎌倉市議会で、
 内閣総理大臣、内閣官房長官、外務大臣、法務大臣、衆議院議長、参議院議長宛の
「人道的見地で難民政策の見直しを求めることに関する意見書」が、可決成立しました。

 地方議会での難民政策に関わる意見表明は画期的なことだと思います。この動きが全国に広がることを願っています。意見書全文を掲載させていただきます。

PDFファイルは、こちら
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人道的見地で難民政策の見直しを求めることに関する意見書

 日本は難民条約の加盟国であるが、難民の受入れは他の先進国に比べて極端に少なく、認定率は長らく1%に届かなかった。2019年は、難民認定申請者数10,375人に対し、認定された人は44人(0.4%)、2020年は、コロナ禍による入国制限で申請者が3,936人に激減した中、認定された人は47人(1.2%)である。

 難民条約を厳格に解釈し、「狭義の難民」しか保護の対象としていない結果、本来保護されるべき内戦や迫害を逃れてきた外国人が救われないまま苦境に立たされている。例えば、トルコなどから迫害を逃れてやってきたクルド人は、他国では多数が難民認定されているが、日本ではこれまで一人も難民と認められていない。

 日本の入管難民行政については、長年、国連などから是正を求められてきた。一つには、難民認定率の低さに対する批判であり、もう一つには、在留資格がなく強制退去事由に該当すると疑われる外国人を原則として入国管理施設に収容する「全件収容主義」と同所での期間の上限を定めない長期収容、人権を無視した処遇に対する批判である。

 さきの第204回国会に提出された入管難民法改正案は、入管施設に収容されていたスリランカ人女性ウィシマ・サンダマリさんの死亡事件の真相解明がされていないなどの批判を受けて、事実上廃案になった。同法案については、迫害や生命の危険から帰ることができない外国人の送還を容易にするもので、対象とされた人々に重大な不利益や人権侵害をもたらすおそれがあること、入管施設への長期収容を是正するために導入するとされた監理措置が入管の大きな裁量権の温存につながることなどに対する批判が相次いだ。人権への配慮が乏しいと繰り返し指摘されてきた日本の入管難民行政を根本的に改めることが求められる。

 埼玉県川口市は、市内に約500人の仮放免のクルド人が居住する。同市はクルド系住民の困窮状況を重く受け止め、2020年12月に仮放免の人に対する就労許可や健康保険の適用などを求める要望書を法務大臣に提出した。自治体による、地域共生の理念の具現化であると理解するところである。

 鎌倉市も地域共生を掲げ、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指しているが、それは日本政府が外交の主要な柱に位置づける人間の安全保障にもつながるものである。また市内には、難民の人たちが暮らすNPO法人アルペなんみんセンターの施設があり、難民と地域をつなぐ地域共生の拠点として始動している。

 鎌倉市議会は、迫害を受け、命の危機に直面して庇護を求める難民に対して冷たい国や社会は、全ての人にとって冷たい国や社会であると考え、国において、下記の事項を速やかに実施するよう要望する。

1 難民認定の在り方

 出入国在留管理庁(入管)から難民認定の担当機関を独立させ、認定基準の明確化、認定審査への弁護士の立会いなどの仕組みをつくり、本来保護されるべき難民が認定されない状況を改める。

2 入管施設への収容

 在留資格がない外国人を原則として入管施設に収容する全件収容主義の現状を早急に改め、入管の裁量による無期限の収容をなくす。改正法案で導入が図られた監理措置は、収容を例外と位置づけるものに変更する。

3 生活困窮の問題

 現行制度における仮放免者は、いつ再び収容されるか分からない不安を抱え、自ら生活の糧を得るすべも閉ざされている。支援団体による身元保証などがあれば就労を可能にし、国の責任において健康保険などの行政サービスを提供できるようにする。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 令和3年(2021 年)7月2日

鎌 倉 市 議 会