鎌倉市議会・ミャンマーの人々の苦境に思いを寄せて、平和の構築に取り組むことを求める意見書を可決!

鎌倉市議会は、2022年10月5日の最終本会議で「ミャンマーの国軍による民衆の弾圧の即時停止と民主的政治体制の回復を促すことを求める意見書」を総員賛成で可決しました。内閣総理大臣、外務大臣、衆参両院議長に送付されます。ミャンマーは、アジア太平洋地域にあって歴史的・経済的に日本と関わりの深い国です。ミャンマー国軍に対して少なからず影響力を持つ日本政府が国軍による支配と弾圧を黙認する姿勢を取り続けることで、人権侵害はより深刻化し、人道危機は長期化します。

アルペなんみんセンターは、鎌倉市議会による意見書提出を歓迎し、ご尽力いただきました各議員に敬意を表します。日本にも、ミャンマーから多くの難民が逃れてきています。しかしながら、ウクライナ避難民と比べ、十分な対応がなされていません。紛争、内戦、迫害から逃れてきた人々が安心安全な生活が送れるよう、引き続き関係各所に働きかけていく所存です。

ミャンマーの国軍による民衆の弾圧の即時停止と
民主的政治体制の回復を促すことを求める意見書

https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/gikai/documents/r4gikaigian2.pdf

ミャンマーでは、2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し、「民主化の10年」を担ってきた国民民主連盟(NLD)の指導者及び支持者の逮捕・拘束、デモへの発砲と参加者に対する暴力行使・逮捕が繰り返された。事態は悪化の一途をたどり、治安部隊による住民の殺害、村々の焼き討ちや空爆が広い範囲で行われている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、本年8月1日現在、ミャンマーの国内避難民はクーデター以降の避難民に限定しても約90万人に上り、隣国のタイに約6千人、インドに4万人超が難民として流出していると推定される。食料・物資・医薬品は欠乏し、子供たちは教育を受けられない深刻な人道的危機に陥っている。

日本政府は、クーデター発生直後から国軍に対し、「民間人に対する暴力の即時停止」「アウンサンスーチー国家最高顧問をはじめとする拘束された人々の解放」及び「民主的な政治体制の早期回復」の3点を求めている。

また、ミャンマー情勢の深刻化を踏まえ、2021年5月28日以降、日本在留ミャンマー人に対し、在留の継続や一定の条件の下での就労を認める緊急避難措置を講じている。本年7月下旬にアウンサンスーチー氏の側近だった元議員ら4人の死刑が執行されたことに対しては、林外相がG7の一員として抗議の声明に名を連ねた。

その一方、欧米諸国が国軍やその関連企業を対象に制裁措置を発動したのに対し、日本政府は実施中のODAの案件をクーデター後も継続した。ODAによる建設事業の一部が国軍関連企業に発注されていたことには批判の目が向けられている。

さらには、本年5月初旬、一般社団法人日本ミャンマー協会(渡邉秀央会長)の一行が内閣官房内閣審議官インド・太平洋経済開発担当を伴ってミャンマーを訪問し、非合法軍政下の労働大臣ほか高官と会談を持った。日本政府高官が会談に臨んだことは、国軍の支配の正当性を日本政府が認め、経済協力を推進する姿勢であると理解されかねないゆゆしき事態である。

防衛省は2015年以降、国軍の幹部や幹部候補生の留学を受け入れ、防衛大学校や自衛隊の施設で訓練等を行ってきた。クーデター後も昨年、今年と受入れを継続していたが、9月20日、来年度以降の新規受入れを停止する方針を明らかにした。同省報道官は、元議員らの死刑執行に先立って国軍に示した強い懸念が顧みられなかったことを重視したと述べている。この方針転換のように、国軍による非人道的行為と不当な支配を容認しない姿勢を示すことが何よりも求められる。

アフガニスタンにおけるタリバーンの政権奪取、ロシアによるウクライナ侵攻を例に挙げるまでもなく、世界情勢は急速かつ広範に不安定化している。その中にあって、武器の供与や軍事力によらずに地域の安定に寄与するのが日本の使命である。同じアジアに位置し、経済協力を通して強いつながりを保ってきたミャンマーが、国軍による民衆の弾圧が長期化し、混乱収拾の道筋が見えない状況にあるのを、傍観していてよいはずはない。国軍による支配を黙認していると見られかねない対応が繰り返されれば、地域の安定に寄与するどころか、ミャンマー情勢を憂慮する諸国や人権団体からの批判も免れない。

よって、鎌倉市議会は、「日本国憲法を貫く平和精神に基いて、核兵器の禁止と世界恒久平和の確立のために、全世界の人々と相協力してその実現を期する」と高らかにうたった平和都市宣言の下、国において下記の事項を速やかに実施するよう強く要望する。

ー 記 ー

1 ミャンマー国軍に対し、民衆の弾圧を即時停止するよう求める。非武装の人々に対する暴力の行使、ジャーナリスト及び民主活動家の拘束、恣意的な死刑執行を一切行わないよう求める。

2 国軍による支配を容認するような交渉を慎み、暫定政府である国民統一政府(NUG)を政府間交渉の相手と位置づけて、民主的政治体制の回復を促す調整及び支援を行う。

3 在留ミャンマー人に対する緊急避難措置を講じた際、難民認定申請者については、審査を迅速に行い、難民該当性が認められる場合には適切に難民認定するとしたとおり、本国情勢を考慮した迅速な審査を行う。現在、タイなどの隣国に一時滞在しているミャンマー難民の受入れについても検討する。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

令和4年(2022 年)10月5日  鎌倉市議会


ミャンマー国軍、民衆弾圧停止を 鎌倉市議会意見書 /神奈川 (毎日新聞,2022年10月6日)
鎌倉市議会は5日、ミャンマーの国軍による民衆弾圧の即時停止と民主的政治体制の回復を促すよう日本政府、国会に求める意見書を全会一致で可決した。