自由に歩ける、野菜や果物が食べられる、静かなところで祈れる、それが嬉しかった

私は、今年の二月にアルペに来ましたが、その時、外に出たのは五年ぶりでした。

品川の入管から一歩外に出ると、外の世界は眩しくて、目を大きく開ませんでした。

入管の収容施設の部屋には窓がなく、外に出ていい時間は一日30分だけなので、入管にいる五年の間太陽を浴びることがほとんどなかったのです。

アルペに着いてスタッフが

「施設の中を案内するよ」と言ってくれたのですが、私は思わず断りました。

もう足が疲れて歩けなかったからです。

入管では、四畳の部屋に四人で生活し、自由時間以外は部屋は外側から鍵がかけられるので出られません。

だから日常的に歩くことがなくずっと座っている状態が五年間続いたので、足腰が弱っていたのです。

そのあと部屋でしばらく休ませてもらったのですが、こんなに静かなところで休んだのも5年ぶりでした。私はイスラム教徒なので一日に五回お祈りをするのですが、それを人の目を気にせず静かにできることが何より幸せで、涙が出そうになりました。

夕ご飯の時間だと言って呼ばれて食堂へ行くと、美味しそうなご飯が湯気を立てて待っていました。

ムスリマである自分のことを気遣って、ハラルのお肉で作ってくれた唐揚げがメインの夕食でした。

唐揚げを一口食べて思わず出た言葉は

「衣が薄い、美味しい」

でした。

隣に座っていたミャンマー人のMさんが

「そうだよね、入管で出てくる唐揚げは衣ばっかりだもんね」

と言い、他のみんなも

「入管の揚げ物、衣食べる、アルペの揚げ物、お肉食べる!!」

「アルペの唐揚げ、ホンモノ!」

と言って笑っていました。

入管では生野菜も出ないし、果物も出ないので、みんなで笑いながら久しぶりの美味しい揚げ物、野菜、果物を食べる幸せな時間でした。

アルペに着いてしばらくは、そんな感動の連続…

アルペの緑豊かな環境も、ずっとコンクリートの壁に囲まれて過ごしてきた自分にとっては輝いて見えたし、いろいろな人に会えること、美味しいご飯を楽しい仲間と食べられることも本当に幸せに感じました。

緑を見て、美味しいご飯を食べて、仲間と話す、そんな当たり前のことができなかった入管での五年間、自分は外に出られたけれど、まだ入管ではそんな日々を頑張っている仲間がいます。

そんな仲間のためにも、自分が入管から出られるように手伝ってくれた支援者たちのためにも、まずはアルペの仲間と協力して、ここで頑張っていこうと思います。

(この話は、インドネシア人のHさんの話をもとにスタッフが編集しています)