FRJが国連⾃由権規約委員会にNGO報告書を提出しました

アルペなんみんセンターも加入しています、難民を支援するネットワーク「特定非営利活動法人 なんみんフォーラムFRJ」は、2022年9⽉12⽇、国連⾃由権規約委員会(本部・ジュネーブ)にNGO報告書を提出しました。同委員会の事前質問リストを基にした政府の報告書に対し、国内の難⺠、庇護希望者、および無国籍者の⼈権状況について、5項⽬23件の勧告を同委員会に求めました。


1.勧告内容

政府の報告書では、近年の運⽤の⾒直しによって「真に保護が必要な難⺠の迅速な保護につながっている」としています。しかし、難⺠認定基準や適正⼿続きの保障、事実認定のあり⽅など、様々な⾯に課題があり、難⺠認定されるべき⼈が認定されていない状況が続いています。難⺠認定申請者への案件振り分けは、就労制限や在留制限を伴い、結果的に申請者の⽣活が困窮する事態となっています。申請者への公的な⽀援制度である「保護費」は厳しい受給要件から、受給者がごく⼀部に限られ、さらに⽀給額は、憲法が定める健康で⽂化的な最低限度の⽣活を保障する⽣活保護制度の60%程度にとどまっていることから、難⺠保護法の制定や、申請者への⼗分な公的⽀援の実施を求めました。

また、2021年に政府が提出した⼊管法改正案(のちに廃案)では、⾃動的に適⽤される「送還停⽌効」を⼀部解除し、難⺠申請を3回以上⾏っている⼈や、⼀定の犯罪歴がある⼈の送還を可能とする規定を含んでいたため、「難⺠認定⼿続きで送還停⽌効の例外を導⼊しない」ことを強く求めました。無国籍者については、⽇本が無国籍に関する国連条約に未だ加⼊していないことから、加⼊に向けた具体的なプロセスの提⽰や、国際的な原則と規範に則った無国籍者の保護のための法整備を求めました。

2022年9⽉12⽇
特定非営利活動法人 なんみんフォーラム(FRJ)


FRJのNGO報告書で⽰した主な勧告

庇護⼿続き
● 難⺠保護法の制定や難⺠保護に関する独⽴した組織の設⽴など、庇護⼿続きの抜本的な⾒直しを⾏う
● 難⺠審査参与員の独⽴性や審査の透明性を確保する
● 全ての庇護希望者に司法審査への実質的なアクセスを保障する

庇護希望者の処遇
● 難⺠認定申請者への⼗分な公的⽀援を実施する
● 申請時の在留資格の有無で⽣活保障に差をつけない

庇護希望者の送還
● 庇護希望者に送還を⽬的とする収容をしない
● 空港で庇護を求めた⼈を退去強制⼿続の対象としない
● ノン・ルフールマン原則に沿った⼊管法第53条3項の⾒直し
● 難⺠認定⼿続きで送還停⽌効の例外を導⼊しない

庇護希望者の収容
● 国際原則に則った収容制度を設け、代替⼿段を検討した上で最後の⼿段としてのみ収容を⾏う
● 新型コロナウイルスの感染拡⼤を理由に仮放免した⼈を再収容しない

無国籍者
● 加⼊を検討している無国籍関連条約等の進捗状況を⽰す
● 無国籍者の認定⼿続きを定め、国際的な原則や規範に則った無国籍者の保護を⾏う

2.今後の動き

これらの勧告を求めたFRJのNGO報告書は、2022年10⽉10⽇からジュネーブで開かれる同委員会において、⽇本政府審査の参考とされます。会期最終⽇の同年11⽉4⽇までに、⽇本への懸念事項や勧告を含む総括所⾒が採択される予定です。FRJは今後も、難⺠や庇護申請者、無国籍者に関する⽇本国内の状況を国連機関に訴え、⼈権課題の解決や政策改善へ働きかけていきます。


報告書(日本語)
第7回ICCPR政府報告書審査(⽇本)にあたっての ⾃由権規約委員会への報告
List of Issuesのうち、難⺠、庇護申請者、および 無国籍者の処遇に関するNGO報告


報告書(英語)
Submission to the UN Human Rights Committee For the 7th Periodic Review of Japan based on ICCPR NGO Report on Treatment of Refugees, Asylum Seekers and Stateless Persons in response to the List of Issues


なんみんフォーラムFRJ(Forum for Refugees Japan) とは

日本に逃れた難民を支援する団体のネットワーク組織です。2004年に⾮営利・⾮政府組織として設⽴され全国の加盟団体(2022年8⽉現在25団体)や国連難⺠⾼等弁務官事務所(UNHCR)と協⼒して活動を⾏なっています。

なんみんフォーラムFRJは個々の会員団体が提供するサービス(難民申請や仮放免などに関わる法的アドバイス、生活、医療などの相談援助、教育支援、キャパシティビルディング、収容所でのカウンセリングなど)を調整し、助けを必要とする人々に包括的な支援を実施できるように努めています。

また、政策提言をつうじて難民の現状と現場の声を伝え、国内・国外でのネットワーク作りにも取り組んでいます。

2011年からは、法務省・⽇本弁護⼠連合会とともに、空港で庇護を希望した者に対する収容代替措置にかかるプロジェクトを実施し、対象者への緊急シェルターの提供や、個々のニーズに合わせたケースワークを⾏っています。

また、アジア太平洋難⺠の権利ネットワークAPRRN(Asia Pacific Refugee Rights Network)、国際拘禁連盟IDC(International Detention Coalition) に加盟しています。